働き方改革の正体を探る②

前回から少し時間が経ってしまいましたが、今回も働き方改革の正体について引き続き考察していきます。

働き方改革の正体について、モヤモヤ感を晴らすために弊社なりの定義をしました。今回はなぜこのような結論を導いたのかをお話ししていきます。

まず、働き方改革自体が目的ではないことは、皆さまも共感できることだと思います。政府の政策であることは間違いないですし、人口減少に歯止めがかからない状況を何とか打破したいのは分かります。そのための労働政策が必要なのも理解できます。しかし、労働力人口の中で、これまで労働の対象でなかった層を引っ張りだしたり、長時間労働だけを数値上で規制したり、待遇を均一にしたりと現象を追っている印象は否めません(もぐら叩きのような感じでしょうか)。

その政策が、全く効果が無いとは言えませんが、もう少し妙案があってもよさそうなものです。例えば、長時間労働の原因が何であるかも特定せずに(実は原因は分かっているが言わないのかもしれませんが・・)、長時間労働の是正号令をかけても、それぞれの企業の状況により深刻度は異なり一律的効果は期待できないでしょう。それを理解するためには、労働法規や雇用慣行だけではなく、日本という国の文化、日本人の仕事に対する考え方を考慮することは必須だと思います。

つまり、根底にはこれまでのビジネス上の慣例、構造、仕事に対する基本的合意があり、それを受けて労働力を提供する構図が成り立っているわけですから、表面だけ変えてもさほど効果はない(皆さまもお気づきとおりです)。

とはいえ、形を変えることで中身も変わるということはあるわけですから否定もできない・・・。

このような問い立てですと、思考が循環するばかりで結局は元の位置に戻るということになりかねません。
それならばと、次のような問いを立ててみることにしました。

『時代の変化が激しい状況下で機能性を追求した場合の効果はどれほどか?』

この問いについて考えていきますと、機能性の追求では限界があり、すでに現時点でその限界値に到達している可能性が高い。そうすると別の軸が必要となることに気がつきます。

世界(今の世の中)に働いている力を何かを考えた上で、時間を早送りすると『個人や組織にとっての意味合いや価値』が機能性に代わる軸になるとの結論に至ったわけです。この捉え方ですと可能性はかなり広がるのです(_10月10日『これからの時代の考察』をご参考ください)。

働く時間は8時間、社内的身分を設ける、ライバル企業より売上を上げる、早く・安価な製品を世に送り出すなどのこれまでの基本的な戦略は、実はもうだいぶ前から陳腐化されていますし、それに気がついていても、方向転換できないことが問題の根深さを物語っているように思えます。
ビジネス戦略が過去のままだとすると、働き方改革なるもののこれまでの延長線上の施策に終始し成功は覚束ないでしょう。ビジネスモデルや戦略を新しい軸で捉えることから出発し、長時間労働などの緊急性があるものは、優先順位から対処療法的に対応することが実現性の高い実行策になると思います。

経営も人間が行うことなのですから、感情や過去の成功体験などの呪縛から逃れることができません。これらの呪縛から脱出するには、考え方自体をシフトするタイミングであると判断したら、素早く、しなやかにこれまでの考え方を捨てていき、その上で新しい方向性と実行策を講じていくこと。
経営の実務を担う皆さまには是非とも挑戦していただきたいテーマです。

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